きもののひ

着物にまつわるあれこれを綴ります。

男子厨房に入らず、な〜んて言われた時代はいつのことやら。
最近は「あなた、私が死んだらどうするの?」と奥さんにけしかけられて料理を習い始める年配の男性が増えているようです。

これ、ほんとに切実ですよ。
私、奥さんが亡くなってどんどんみすぼらしくなっていく初老の男性を見たくないんです。
昔はあんなに偉そうにしてたのに。
襟の黄ばんだシャツ。虫食い穴のあいたジャケット。不摂生から栄養失調。
なんなのこの体たらくは…。

そう、数ヶ月前、父の実家にお彼岸帰省した帰りに、おじいさんとすれ違ったんです。
父が「よお!」と年上相手にしてはずいぶんくだけた挨拶をしていたので、
「知り合い?」とたずねると、
「1コ上だ。まだ生きてたんだな、アイツ」と。
「え?!まだ60にもなってないの?おじいさんに見えた…。病気だったんだ?」
「いや、奥さんが亡くなってから栄養失調になって死にかけてた」
えええ?!
「地元離れてたんだけど、今は子どもに引き取られて世話してもらってるよ」
奥さんが亡くなっただけで死にかけるなんて…信じられない…。
コンビニもスーパーもあるのに…。
ショックで食事が喉を通らなかったのかしら…?
いやまさかそんな…。

それはさておき、
若い女子の間でも「料理もできない人なんて」という風潮が生まれているみたいです。
確かに、男性芸能人の料理上手にはびっくりしてしまいますよね(シロサキジンとかカナメジュンとか)。

「現状に満足しているのに、わざわざ何もできない人間と同居して面倒を増やすなんて有り得ない」と思っている独身男女が多いからこんな状態になってるんだろうな、日本…。
がんばってJAPAN。


さて、先日読んだこの本に「武士のたしなみ(趣味)」とされる八法が挙げられていました。

忘れそうなモノ語り 忘れそうなモノ語り
林 えり子 (2005/08)
グラフ社

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武士は、武芸はもちろんのこと、たしなみ(趣味)にもうるさく言われていたようで、
「書道、茶道、和歌、謡、舞、鼓、包丁、経師(表具師)」
の八法を習得しないと無粋者扱い(…だったのだそうですよ…。つらそうだ)。

この中の「包丁」というのはもちろん料理のこと。
著者のおうちでは、料理は女だけの仕事ではなかったのだそうです。
そして、障子の張替え(表具師)もまた。

お茶もいれられない「男らしい」日本男児、今こそ武士になるときだ!
「案山子と暮らした方がマシ」なんて言われっぱなしでいいのかい!?
…って無理かな…ボクたちはいくつになってもママが大好きなんだモンね(何か嫌なことがあったのかい?)。

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先日の和裁の日に、先生が頼まれ物の長襦袢のお直しをされていました。

しつけ糸がついたままだったので
「長襦袢のしつけ糸って取らないんですか?」
と聞いてみたところ、
「取るのよ。取るんだけど、付けてる人、最近多いわよね。でもこの人、振り側も全部ついてるわ…振りから見えるのに気にならないのかしら?」
とのこと。
どうやら先生は取る派のようです。

私も取る派なのですが(というか、取らない派がいることを最近まで知らなかった)、人によって色々ですよね。
私が「しつけ糸は取るもの」と考えているのは、
かなり前に出版されたと思われる、有名な和裁士さんの本に
「留め袖の襟の細かいしつけも本来は外すものです。しつけはあくまでもしつけ」
とあったので、呪いにかかってしまったんだな(笑)。

素人考えですが、型崩れするような心もとない襦袢地なら、ちょっと引っ張ってプチンと切れるしつけ糸は使わずに、丈夫な糸で完璧に押さえるように仕立てればいいのでは?と思います。
実際、北陸のあたりでは「ぞべ」(留袖の襟の、細かく縫い目が出る縫い方)を長襦袢の袖にも施すのだそうですよ。
何かに引っかかってギャザー状になると生地を痛めそうだし、糸が切れてビロ〜ンてなったときのうらぶれ感ときたら…(哀愁)。

でも、二派に分かれるのには理由があるはず!
と調べてみたものの、はっきりしない…。
これ、しつけを取る理由と取らない理由がわからないと、解決しないように思う…。

先生は和裁学校で教えてらしたので「取る」のは間違いではないと思うんです。
ということは「取る」と教えている学校と、「取らない」と教えている学校がある…ということですよね?


諦めきれずに検索していたところ、『しつけは取らない』と学校で教わった和裁士さんが、着物に関する本を出している先生に「仕事をしている呉服屋さんでは『取る』と言われるのですが、どちらが正しいのですか?」と質問されていました。
その和裁士さん(お若い方のようです)は、呉服業界で長くお仕事をしているお店の方と意見が違うことに悩んでいらしたようです。
「しつけ糸は取らないと教わったのに、全部取られた襦袢の直しを依頼され、一部の直しだけなのに「全部にしつけしておいて」と言われるとムッとする」とも(「どうせ取るくせになによ!」って気持ちは解かる!)。

先生の答えを要約すると、
昭和30年代までは、長襦袢は着物よりも頻繁に手入れするために(型崩れを防ぐ意味で)しつけは取らなかったとのこと。そのしつけは細かいものではないのだそうです。

『頻繁に手入れする』ということは解いて洗う、ってことですよね。
つまり、仕立てる時に、解くことを前提にして縫うから「しつけ糸で補強する」必要がある…のだ!!

『解いて洗うから→ガッチリ仕立てない→型崩れ防止のためにしつけ糸で補強→そのしつけも解いて洗うから細かく縫わない』

ということは、仕立ててくれる和裁士さん(通っていた学校)の方針に左右されるのでは?

つまり
◇昔ながらの「頻繁に手入れする」ことを前提とした仕立て方(解きやすい)を学校で習うと「しつけ糸を取らない」と教えられる。

◇現代に合わせた「頻繁に手入れしない」ことを前提とした仕立て方(ガッチリ解きにくい)を学校で習うと「しつけ糸は取るもの」と教えられる。
この二派があるってことではないかしら。

調べたところ「取る」「取らない」は学校の方針による、みたいだし。
ということは、仕立てるときに和裁士さんに「しつけ糸、取るって習いました?取らないって習いました?」って聞けば安心して長襦袢を着ることができる…かもしれませんね。


私の着付けの先生(お茶の先生でもある)は「プカプカ浮くのを押さえるために付けたままにしています」とおっしゃっていました。
なるほど張りのある生地やポリだと、馴染むまで浮いている感じがありますもんね。

こんな感じで、人によって取る理由、取らない理由は色々のようです。
『絶対取る!』『絶対取らない!』って変に頑なにならず、
着る人の気が済むような着方をすればいいんじゃないでしょうか。

楽しい着物生活を目指しましょう〜

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